豆腐メンタルのミカタ

ヤワにゆるっと生き抜くTips

初恋

高校生になり好きな人ができ、
そう日も経たないうちに晴れて恋人同士になった。

こういうことって、「パパには内緒ね!」ってお母さんとウキウキ話したりするものなのかな、なんて憧れを抱きつつ、元々両親との会話が少ない(というか話しかけてもまともに取り合ってもらえない)私は報告することもなかったが。

人を好きになる、恋心を抱くという初めて経験。
一緒にいるだけで楽しい、何でも話せる。
誰かを愛おしく思うってこんな気持ちなんだと16、7になって初めて知った。
辛い家庭のあれこれも、彼と一緒にいる時間は忘れられる。
少しずつでも心の穴を埋めていって、人を愛すこと、人に愛されることを学んでいきたいと心から強く思った。

記念日に向けて手作りのフォトアルバムやお菓子などプレゼントを用意するのも大きな楽しみだった。
いつも、満面の笑みで喜んでくれるから。

ウブな恋愛。

アルバイトはしていたものの自由に使えるお金もあまりなく、デートといえば学校帰りによるショッピングモールにでのウィンドウショッピングくらいで、映画を観たり少し電車に乗って海を見に行ったりするのがたまの贅沢だった。

しかしこのショッピングモールでのデートが悲劇を生んだ。

ある日いつものように彼と手を繋いでショッピングモール内を歩っていると、後方からわたしの名前を呼ぶ声がした。

振り向いてみるとそこには激昂した母の姿が。

「この、不良娘が!」

そう叫んだ数秒後にはビンタされた頰がジンジンと痛んだ。

私は母に腕を掴まれ、彼を残したまま家へ連れて帰られた。

なんてことをするのだ、と怒りで全身が震えるもどうしようもない。
彼は呆気にとられ途方に暮れていた。
そこで話し合いをするにも店に迷惑をかけてしまうだろうと思ったらもう連れられるまま帰るしかないのだ。

家に着くと母の怒りはヒートアップ。
「浮かれてんじゃねえ」「男と出かけるなんて許されねんだよ」と延々と怒鳴られていると父帰宅。
しばらく立って黙って聴いていたと思ったら急に頬を打たれた。

次に見つけた時には殺してやると言わんばかりに責め立てられ、怯えてしまい何も言えなかった。

次の日に学校へ行くと担任の先生に呼び出された。

困ったような呆れたような顔でため息をつきこう言い放った。
「あいつと付き合うのはやめとけ」

なぜ学校の先生にそんなことを言われなければならないのかよくわからなかった。
先生すら何か反対する理由があるのだろうか。
なにもやましいこともないのに。

「お前の父ちゃんから電話が来た、すっげー剣幕だったぞ」
そう言われた瞬間目の前が真っ暗になった。

なぜこんなにたくさんの人を巻き込むのか。
どうして、こんな仕打ちを受けなければならないのか。
悲しくて悲しくて堪らなかった。

担任の先生から彼にも、もう私とは関わらないようにといったらしく、その日以来彼には避けられるようになり話しかけられることもなくなった。

事情を聞いた彼の友人たちも私を奇異な奴だという目で見るようになってしまったのである。

恥ずかしさと、悲しさと、悔しさが乱れ入り混じる。
もう消えてしまいたかった。

こうして私の初恋が終わり、希望の光も見失った。