はじめの一歩
お客様対応では段々と簡単なことですら答えられなくなって、言葉に詰まり、しどろもどろになり、お客様にも上司にもこっぴどく叱られる。
これまで私を励まし優しく見守っていてくれた人たちも愛想を尽かして苦笑い。
とうとう同じ部署のほとんど全員から冷たい目線を向けられるようになってしまった。
困らせようだなんて1ミリも思っていない。
毎回新しいことの勉強、復習を重ねて読み込んだノートはもうボロボロ。
出勤の度に「最低でも足手まといにはならないように、自分の仕事はこなそう」と意気込むのだが何かしらトラブルを起こしてしまうのだ。
言われたことすらできない。
マルチタスクがどうしてもこなせず、一気に2つ3つぐらいのことを頼まれても1つの仕事に集中してしまうとその他頼まれていた仕事の存在すら忘れてしまう。
一番問題なのはこの集中力の欠如が祟ってお客様対応をしている最中に他の人の声が耳に入ってきてしまうと自分の仕事や今何を言っていたかがわからなくなりパニックに陥ってしまうことだった。
今でも、よくあの時解雇されなかったなとしみじみ思う。
とにかく自分が憎くて周りが怖くて酷く辛かった。
出勤するまでの道のりでは強い吐き気に襲われ、目眩を起こし、終いには職場に近づくにつれて手が震えるようになり、「このままでは自分が崩壊していってしまう」と危機感を覚えた私は誰かに助けを求めずにはいられなくなっていたのだ。
大学の相談室の前で入室を躊躇う。
これまで小中高校にも相談室なるものは存在していたものの、悩みが悩みであっただけに相談員に心を開いて全て打ち明けるわけにもいかず一度も足を踏み入れたことはなかった。
しかしもうそんなことは言っていられない。
家族に見捨てられ、社会でも自分は邪魔者のレッテルをはられてしまったのだ。
縋りたい、その一心で相談室を頼ってみることを決心した。